「みんなで学ぼう!損害賠償と健康管理」 報告

「みんなで学ぼう!損害賠償と健康管理」

放射能汚染と向き合うために
尿検査から見えてきたもの〜健康管理調査の必要性

現在の賠償の指針の内容と問題点、可能性、健康管理などについて、講師をお招きして昨日、大河原で勉強会を開きました。

記憶を頼りに記録しておきますので、参加された方で補足、感想などありましたら是非、コメント欄からお願いします。

2011年12月に出された「自主的避難等に関する指針」は、避難した人、とどまった人の双方に対する賠償の指針ですが、その対象は福島県の一部にとどまり、同じように放射能汚染の被害を受けている宮城県民は賠償の対象となっていません。宮城県南部は地理的にも、線量的にも福島県と同程度、場所によっては賠償を受けた福島県の地域より線量の高いところがあるにもかかわらずです。宮城県の南部でも、移住を決意した人、農業をあきらめた人がいます。こうした原発被害に対しては、正当な賠償を受け取る権利がある。

納得できる根拠もなく決められた、避難指示対象区域と自主的避難等対象区域が判断の重要な基準になってしまい、その地域の住民に対してだけ賠償がされているのが現状です。しかもその賠償額は弁護士の感覚からしても異常に低い額なのだそうです。宮城県南部でもある程度まとまった人数で、正当な賠償を求めて行動することは市民活動にもつながり、国の方針を変えることに繋がる可能性がある。また、正当な賠償を求めて認めさせることができれば不当な線引きになってしまっている自主的避難等対象区域を自主的に広げる事になる。


具体的に賠償を求める場合、次の3つの方法がある。

このうち「東京電力」は国の線引きした自主的避難等対象区域外からの訴えに対しては紙ぺら1枚で賠償の対象には該当しない、として終わりにさせられているのが現状。
「裁判所」は放射能のことや線量の事など専門的な内容が判断基準になるがその事を裁判官が知っている訳ではないので基本的に国の指針を判断基準とする傾向があるため必ずしも住民の意向に沿った結果が得られるとは限らない。
「ADR」がこの3つの選択肢の中では一番可能性があり、現実的だ。裁判所で結果がでたら二度と裁判を起こすことはできないが、ADRで思ったような結果が出なくても新たに裁判に訴えることも可能。ただしADRは最近、結果を出来るだけ早く出すことを目指しているために1回目の相談が非常に大事になってくる。作戦を立てて臨むことが大切。(この件に関しては弁護士の方から、やる気なのであれば相談に乗るし一緒にやりましょうとの提案もいただきました)

尿検査の結果を元に健康管理の必要性などの話もいただきました。尿検査の結果、少なくないセシウムが検出された子どもを3ヶ月後に再度、検査をするとほとんど数値が下がっていることも報告されました。それは1回目の検査の結果にショックを受けそれからの食生活に注意をするようになるからだということです。

食生活や生活パターンの改善で尿中セシウム量は顕著に減少する。

逆に言えば、内部被曝への注意をせず好きなものを食べると被曝する可能性が高い、ということです。そして測定結果から見ると放射線量が高い地域と低い地域で尿中セシウム量の相関関係が見られない。尿中セシウム量が高い原因は結局、どこでくらしているかではなく何を食べているか、によるものだとも報告がありました。


会場の都合で5時に終了した後、1階のロビーで具体的に賠償を求めるならどうしたらいいかなど具体的な相談、提案をいただきました。

個人的に、ADRと今回の放射能問題ののやり取りなどを精力的に行なっている弁護士の方に聞いたところ、宮城県でも、このような深刻な事態が起こっているということは全く知られていないと聞き、ショックを受けました。興味関心を持って動いている方ですら放射能は福島県の問題なのです。宮城県に住んでいる私たちを黙っていても誰かが助けてくれることは全く考えられません。

困難な状況に置かれている宮城県南部の者に寄り添う姿勢で接していただいた4人の方のに改めてお礼を述べたいと思います。ありがとうございました。
尾谷恒治さん(弁護士)
阪上武さん(フクロウの会
青木一政さん(フクロウの会
満田夏花さん(FoE Japan

※当日の模様を収録した資料用のDVDを貸し出しています。てとてとに置いてあります。


【2012/03/28:追記】
子どもたちを放射能から守るみやぎネットワーク(略称:子どもみやぎ)
事務局の沼倉さんの報告を、子どもみやぎのサイトから転載します。

◆損害賠償の現状と可能性

宮城県の南部では、福島県よりも高い線量が観測されている地域もあるが、宮城県は「避難指示区域」「自主的避難区域」の対象とはされていないため、宮城県の「損害賠償」請求は認められにくい現状がある。

本来、福島原発によって生じた「実害」の東京電力への「損害賠償」請求の仕方には、次の3つの方法がある。

  1. 東京電力に直接請求する。
  2. 「原子力損害賠償紛争解決センター」に和解の仲介(ADR)を申し立てる。
  3. 裁判所に訴訟をおこす。

しかし、
1)については、「避難指示区域」「自主的避難区域」にしか「賠償」は認められてい
ないため「避難指示区域」「自主的避難区域」とされていない宮城県では「賠償請求」
は認められにくいのが現状である。

3)については、裁判は費用・時間がかかるうえに、裁判所は「放射線」について専門
的な知識を持ち合わせていないので、行政が出した基準、つまり、避難については国の
「20ミリ」、除染については国の「1ミリ」に基づいて判断がなされる。そのため、
「20ミリ」以下の宮城県では、避難についての「賠償請求」が認められにくいのが現
状である。

2)「賠償」の程度はまだ低いが、結論がはやく、1)や3)よりも認められやすいの
で、今の制度のなかでは、一番、現実的である。

「風評被害」は、「原子力損害賠償紛争審査会」が調査をして、声があがらないところ
は対象外とされているだけである。また、「原子力損害の範囲の判定等に関する中間指
針」でも「個別の損害については今回の原発事故との因果関係が明らかなら認めること
もあり得る」とされている。

そのため、宮城県でも、具体的にこういうことで困っている、「実害」を受けていると
いう声を上げるべきで、宮城県の声は東京には伝わっていないから認められていないと
いうのが現実なのである。

◆健康管理の必要性

  1. 福島老朽原発を考える会(フクロウの会)が2011年5月22日から対象52名に延べ66回実施した尿検査の結果、北は岩手県奥州市から南は千葉県柏市まで、広い範囲で子どもの尿からセシウムが検出されている。(フランス放射能測定NGO-ACRO高純度ゲルマニウム測定器)
  2. ACROの測定結果によれば、セシウムのレベルは事故直後と同程度かそれ以上であり、時間経過とともに自然に減るわけではなく、微増した例も観測されている。
  3. 福島原発によるセシウムのレベルは「放置してよいレベル」ではなく、例えば、現在の汚染の状況は、バンダジェフスキー氏の研究によれば、チェルノブイリの事故では3歳〜7歳の子どもの60%に心電図異常が発生したレベル、福島昭治氏の研究では、膀胱がんの前段現象である「上皮内がん」の発生率が59%〜64%のレベルである。
  4. 食生活や生活パターンの改善で尿中のセシウム量は顕著に減少する。例えば、一関市の4歳児の例では、2011年7月までは放射線のことは全く気にせずに、祖母の畑でとれた野菜・シイタケ・山菜などを食べていたが、家で栽培した干しシイタケを測定したところ1,810Bq/kgが検出された(フクロウの会/ACRO測定)。数値が明らかに
    なって以来、野菜は西日本産・北海道産などに切り替え、3ヵ月後、12月に継続検査を行った結果、顕著に尿中のセシウム量が減少した。

〔結論〕健康調査によって内部被ばく量を精確に測定して、食生活や生活パターンを見直すことにより、体内被ばく量の減少と健康被害の予防につなげることができる。そのため、精度の高い健康調査を継続して行うことが重要である。

<今後の対応>

以上を踏まえ、子どもみやぎとしても、福島の子どもたちを守る法律家ネットワーク、また、原発被災者弁護団などを通じて、福島原発事故によって宮城県内で「実害」を被っている事例について福島県と同程度の「補償」が受けられるよう「原子力損害賠償紛争解決センター」に働きかけることを、今後、検討して参りたいと思いますので、皆さんのご意見をお願い致します。

文責 子どもみやぎ 事務局 沼倉 昭仁

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