放射能汚染廃棄物の焼却反対に関する申し入れ書

2017年3月28日に放射能廃棄物の焼却を考える県南の会より仙南地域広域行政事務組合に対して申し入れ書が提出されました。


平成29年3月28日

仙南地域広域行政事務組合
理事長 滝口 茂 様

              放射能汚染廃棄物の焼却を考える県南の会
会長 長谷川 進

放射能汚染廃棄物の焼却反対に関する申し入れ書
(申し入れ理由)
昨年11月3日、村井知事は市町村長会議において、県内保有の放射能汚
染廃棄物(1㎏当たり8000ベクレル以下)を県内15箇所の焼却炉で一
斉に焼却(一般廃棄物と混焼)することを提案しました。
そして、貴組合は、昨年12月21日に理事会を開催し、県の方針通り、
仙南クリーンセンターにおいて試験焼却することを決定しました。
しかし、放射能汚染廃棄物を焼却すれば、廃棄物中の放射性セシウムを拡
散させ、子どもや住民が内部被ばくし、放射線障害を発症するリスクに晒さ
れることになります。
したがって、これに反対する立場から、貴組合に対して下記の通り見解を
求める申し入れを行いますので、真摯にお応え下さいますよう望みます。

(申し入れ内容)
1 上記の通り、村井知事は、県内保有の放射能汚染廃棄物を県内で一斉に焼
却することを提案しました。
しかし、放射能汚染廃棄物は、福島第一原発事故によるもので、発生させた責任は「東京電力」にあり、その処理は、国際的な原則に照らして加害企業(東京電力)と推進者(政府)が行うべきです。
したがって、貴組合は、県の方針に沿った今回の試験焼却決定を白紙に戻
し、改めて検討し直すべきと考えますが、貴組合の見解を求めます。

2 貴組合は、理事会を開催し、上記放射能汚染廃棄物の焼却を仙南クリーンセンターにおいて実施することを決定しました。
しかし、この決定は、本来、仙南2市7町の全ての自治体が、放射能汚染廃
棄物の処理を自主的に決定し終えた段階で、全市町の総意を受けて行うべきで
あるにもかかわらず、貴理事会は、これを待たずに先行して決定しました。
そして「理事会の決定は仙南2市7町の総意である」かのようにマスコミに発表し、焼却決定の「既成事実化」を図ろうとしたように見受けられます。
したがって、地方公共団体の執行部である貴理事会に、特措法で定められた自治体の権限(1㎏当たり8000ベクレル以下の放射能汚染廃棄物は、自治体が処理を決定する)を越権できる権限があるのかどうか、その法令上の根拠は何かについて貴組合の見解を求めます。

3 「地方自治法第2条3項の1」では、「住民の安全と健康」について明記し
ていますが、貴組合は地方公共団体ですので、この法律の直接的な適用は無
いと思われます。
しかし、貴組合の理事会を構成する理事長並びに理事は、仙南2市7町の
首長ですので、これらの方々が理事会において、仙南クリーンセンターの試
験焼却を決定する際、「焼却による放射性セシウムの拡散は、本当に無いのか」「肺呼吸による内部被ばくの危険性は、本当に無いのか」等「住民の安全と健
康」を真剣に検討し配慮すべきなのですが、その努力の跡がよく見えません。
したがって、貴組合に対し上記努力に関する具体的内容の明示を求めます。

4 放射能汚染廃棄物の「焼却」を実施する場合、「住民との合意形成」が極め
て大切といわれております。
しかし、昨年12月18日に大河原町上谷集会所と役場において実施され
た住民説明会の様子を伝えた河北新報(12月19日付朝刊)の記事に「大
河原町は、町内2ケ所で住民説明会を開いた。住民からは不安を訴える声が
相次いだ」「参加者からは『安全だとされながら原発事故が起こった。試験焼
却でも問題が起こらないと言えるのか』『なぜわれわれがリスクを負わなけれ
ばいけないのか』と試験焼却に反対する意見が続出した」の声が掲載される
等、「住民との合意形成」が不十分であることを端的に示しています。
貴組合は、地方公共団体ですので、「住民との合意形成」についての直接的
な責務は無いと思われますが、仙南2市7町の首長を務める貴組合の理事長
並びに理事の方々が、理事会において「住民との合意形成」を図るためどの
ように取り組み努力されたのか、住民から非常に注目されるところです。
したがって、貴組合に対し、仙南2市7町における「住民との合意形成」
の状態を表す各市町の住民説明会実施に関する資料等の明示を求めます。

5 国や県は、焼却炉で使用するバグフィルターは、放射能汚染廃棄物中のセ
シウムを99.9%除去できるので安全であると説明しております。
しかし、岩見億丈氏(医学博士)の調査によれば、遠野市における放射能
汚染牧草と一般ごみの混焼(2012~14年)では、バグフィルターでの
除去率が64.4%で、残りは放射性セシウムを含む排ガスと一緒に漏出が
続いた可能性があると指摘しています。
また、岩見氏は、宮古市で実施した焼却でも「約2割がバグフィルターを
通りぬけた」としており、「放射性廃棄物を一般廃棄物焼却炉で処分するのは
中止すべきだ」と強調しています。(昨年12月9日付毎日新聞)
したがって、このような問題を曖昧にしたままでは、「安全への信頼」を得
ることが出来ないので、実験用焼却炉において「物質収支」(焼却炉に投入し
た汚染廃棄物のCsの量=主灰と飛灰中のCsの量+焼却炉の中に付着した
Csの量+廃ガス中のCsの量)を検証し、実際に「99.9%のCs除去」
が成立するのか確認すべきと考えますので、貴組合の見解を求めます。

6 国は過去の試験焼却から、バグフィルターで放射性物質を99.9%以上除去
出来ると主張しています。
しかしこのデータは計測が非公開で行われたもので、第三者機関による追
認測定も行われておりません。
理論的には焼却炉内の高温(800℃以上)で気体化したセシウムを含む飛灰
を、バグフィルターの前で200℃以下の温度に下げ、この時点で再び気体から
固体に戻ったセシウムが、飛灰に付着したところをバグフィルターで捕捉し、
除去出来ると説明しています。ただし、このプロセスが成立するには十分な
時間と、十分な濃度が必要といわれております。
したがって、大量の空気が流れる短時間の中で、微量濃度のセシウム気体
が固体に再結晶し、飛灰に付着する根拠を示して下さい。

7 貴組合は放射能汚染廃棄物の焼却に当たり、モニタリングポストを複数箇
所に設置して空間放射線量を常時監視し、安全を保障する事を理事会で決定
しました。
しかし、モニタリングポストが空間放射線量の上昇を検出出来る程の条件
で焼却を考えているのですか。一般ゴミと汚染ゴミの混合比率や、炉内に送
り込まれる空気量が不明なため、推定される空間放射線量は計算出来ません
が、昨年試験焼却をした仙台市のデータを基に計算すると、バグフィルター
が無くても検出できない程の低濃度での焼却を行っています。
したがって、検出できるとする数値的根拠を示して下さい。
8 焼却場からの排ガスに含まれるセシウム濃度を、国は立方メートル当り次
の様に定めています。
セシウム134濃度/20Bq + セシウム137濃度/30Bq <1
(もしバグフィルターの除去率が本当に99.9%以上であれば、両分母は限り
なく0であるべきです)
この基準を満たす様に一般ゴミとの混焼率を決めるのでしょうが、全量焼
却には何年かかりますか。現在のセシウム134,137の残留割合から推定すれ
ば、25Bq/㎥程度のセシウムが長期間大気に放出され、それを吸い込む事によ
る内部被曝が心配されます。内部被曝は最も恐ろしい被曝で、従来、あって
はならないものとされていました。
放射能汚染廃棄物は、東北、関東の各市町村に存在します。その中で宮城
県だけが一斉焼却を要請しています。
貴組合が焼却を受け入れる事を決定したプロセスにおいて、内部被曝をど
のように評価され、どのようなデータをもって健康被害は生じないとの結論
に至ったのか、そのデータを示して下さい。

9 仙南クリーンセンターにおいて、放射能汚染廃棄物の焼却(一般廃棄物と
混焼)をする場合、
① 一般廃棄物と放射能汚染廃棄物の混焼は、どのような割合で行うのか。
② 焼却灰は、1日、1ケ月、年間当たりどれくらいの量になるのか。
③ 焼却炉の煙突から排出される排ガス量は、1時間当たり及び1日当たり
何㎥になるのか。
④ 放射性セシウムを含む排ガス及び降下物は、年間の風や雨、雪などの影
響を受け、どのように拡散するのか。
⑤ 子どもや住民が、呼吸を通じて空気中に漂う放射性セシウムを体内に取
り込み、内部被ばくするリスクをどのように考えているのか。
⑥ 作業者の被ばく防止対策は、どう考えているのか。
⑦ 飛来し降下する放射性セシウムによる空気、水、土壌等、環境への悪影
響について、どのように考えているのか。
⑧ 貴組合の行政報告によれば「空間線量率を常時監視するモニタリングポ
ストを、仙南クリーンセンター及び仙南最終処分場にそれぞれ1ケ所設置
する」となっているが、どのような機器をどのような場所に設置するのか。
⑨ 上記報告によれば「空間線量率を常時監視するモニタリングポストを角
田市、白石市、大河原町内に設置する」となっているが、どのような機器
をどのような場所に設置し、どのような測定をするのか。
⑩ 放射性セシウム汚染による農産物への風評被害発生のおそれはないのか。
ある場合、どのように対策するのか。そのための予算は有るのか。
⑪ 上記に関連する環境アセスメントを実施する計画はあるのか。ある場合、
どのような内容になるのか。
等の懸念と不明な点があります。
したがって、上記各項目の対策内容をご提示くださいますよう求めます。

10 仙南クリーンセンターに、保管地から1㎏当たり8000ベクレル以下の
放射能汚染廃棄物を搬入する場合、
① 搬入は、管内各市町(大河原町を除く)からだけなのか。あるいは、仙
南クリーンセンターの稼働能力に応じて、他管内の分も搬入するのか。
② 各保管地からの運搬量や運搬方法、運搬経路はどのようになるのか。
③ 運搬中、放射能汚染廃棄物を誤って道路にまき散らしたりしないのか。
④ 作業者の被ばく防止対策は、どう考えているのか。
等の懸念と不明な点があります。
したがって、上記各項目の対策内容をご提示くださいますよう求めます。

11 仙南クリーンセンターから焼却灰を搬出する場合、
① 焼却灰の搬出量、搬出方法、搬出経路はどうなるのか。
② 走行中、誤って焼却灰を道路にまき散らしたり、風圧で空気中に飛散さ
せたりしないのか。
③ 作業者の被ばく防止対策は、どう考えているのか。
等の懸念と不明な点があります。
したがって、上記各項目の対策内容をご提示くださいますよう求めます。

12 放射性セシウムを含む焼却灰を搬入する最終処分場(白石市)は、管理型
処分場であり、かつ、多量の焼却灰を集積するので、以下をはじめとする諸
問題が想定されます。
① 処分場への焼却灰の搬入は、1日、1ケ月、年間当たりどれくらいの量
になるのか。また、焼却灰の搬入限界は、何年分くらいに見積っているか。
② 集積する焼却灰の1㎏当たりベクレルは、どの程度を想定しているのか。
③ 集積された焼却灰による住民や作業者の放射線被ばくと健康被害をどの
ように考えているのか。
④ 層状に積み上げられた焼却灰の内部に雨水が浸透し、半年後に放流水(浸
出水)となって現れると言われている。
そのため、放射性セシウムによる地下水脈の汚染、河川や土壌の汚染等
が懸念されるが、放流水(浸出水)の流出先や経路はどうなっているのか。
⑤ 上記④から長期的モニタリングによる監視を、最低でも週1回程度行な
わないと、放射性セシウムによる影響や被害発生を見逃すおそれがあると
言われているが、どのように対策するのか
⑥ 放射性セシウム汚染による農産物への風評被害発生のおそれはないのか。
ある場合、どのように対策するのか。そのための予算は有るのか。
⑦ 上記に関連した環境アセスメントを実施する計画はあるのか。ある場合、
どのような内容になるのか。
等の懸念と不明な点があります。
したがって、上記各項目の対策内容を、ご提示くださいますよう求めます。

13 放射能汚染廃棄物の焼却によるセシウムの拡散は、6年前の福島第一原発事故によるものと違って、人為的なものであるだけに、為政者の判断ひとつが「子どもや住民の安全と健康」を左右すると言っても過言でなく、その責任は重大といえます。
したがって、上記項目に対する回答につきましては、理事会の責任を国や
県に丸投げすることなく、主体的な態度で臨まれますよう切望いたします。

(回答期限と意見交換会)
1 申し入れ事項に対する回答を、平成29年4月18日頃まで、会長宛てに書面にてご回答くださいますようお願いいたします。

2 回答は、貴組合事務所において行い、その際、意見交換会を実施されますようお願いいたします。(所要2時間程度)
以上

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